天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 ふたりの会話が耳に入ってきて、私って面倒くさい女だな……とさらに自己嫌悪に陥る。醜態をさらしたくもないのに、身体が重くて思うように動かない。

「話してごらん。焦げを除いて食べれば消化できるかもよ、その初恋」

 大人の余裕を感じさせる落ち着いた声でそう言われ、心が揺れ動く。

 酔っているのもあって、今ならどんどん語れちゃいそう。彼とは滅多に会うことはないから、あれこれ打ち明けても支障はなさそうだし。

 私は突っ伏したまま顔を相良さんのほうに向け、潤んだ目でとろんと見上げる。

「……誰にも言わないでくださいね?」
「もちろん。俺だけの秘密にしておく」

 彼も同じようにテーブルの上で腕を組み、ゆるりと口角を上げて囁く。その吐息交じりの囁き声と〝秘密〟という単語に妙にドキドキしつつ、お言葉に甘えて吐き出させてもらうことにした。

 お互いに身体を寄せ、さっきよりも明らかに近い距離で密かに話し始める。

「私、ここに来てたお客さんが情報官として働いている姿を見て、めちゃくちゃカッコいい!と刺激を受けたのがきっかけでこの道を目指したんです。彼と同じ景色が見たくて」

 今でもあの時見た城戸さんの姿は鮮明に蘇ってくる。