天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 次第に声に怒気を含ませて非難する暁月さんに、江口さんはぐっと唇を結んで黙り込む。おもむろに立ち上がって悔しそうにしながらも私たちに向き直り、「申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げた。

 謝罪をする彼を、望さんは憐れむように見ている。

「今回の件は、彼ときちんと向き合えていなかった私のせいでもあります。本当にすみませんでした」

 彼女も頭を下げた瞬間、江口さんはさらに肩を落としたように見えた。きっと、彼が望さんを好きな気持ちは本物だったのだろう。

 騒動の全容がわかった安堵から、私も肩の力が抜けていった。


 内輪だけで解決したため、江口さんはお叱りを受けただけで済んだ。とはいえ、婚約は完全に解消されるだろうし、人事部長様にも目をつけられてしまったので、ダメージは少なくないはず。

 望さんたちが会議室を出ていった後、暁月さんがお義父様を見つめて確認する。

「これで莉真たちもお咎めなしだよな?」
「……ああ。まるでお前たちの同窓会を見ているようだったが」

 会議資料を手にして腰を上げた彼は、ほっとしたようなため息交じりにそう言った。