暁月さんと両想いになって、身体を重ねて、本物の夫婦として幸せな日々が始まった──その矢先のことだった。夢見心地の雲の上から突き落とされたような気分になったのは。

 七月に入ってすぐのある日、仕事中にひとりの社員に呼ばれ、「本局の相良部長から電話だよ」と言われて驚いた。お義父様から私に電話をかけてくるなんて初めてだったから。

 内容は、仕事が終わったら少し時間を取ってほしいというもの。一体どうしたのだろうかと、会社を出た後約束した喫茶店へ緊張気味に向かい、久しぶりに彼と顔を合わせた。

「急に呼び出してすまないね」と気遣ってくれたが、向かい合って座る彼の表情は硬く空気が張り詰めている。

 ただならぬなにかを感じつつ、頼んだカフェラテが運ばれてきて間もなく、向けられたタブレットのディスプレイを見た私は息が止まりそうになった。

 映っていたのは、スペインバルで城戸さんとふたりになった数分の間に撮られた写真。親密だと誤解されても仕方のないワンシーンで、冷や汗が流れる。

「一体誰が、こんな……」
「匿名で送られてきたんだ。〝ふたりは不倫している。彼らを処分しなければこの写真を拡散する〟という文言と一緒に」