天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 また拓朗との仲を疑われそうだから隠しておきたかった? それとも、父を庇うため?

 なんにせよ、会ってちゃんと話をしたい。あの写真を送りつけた人物の特定もしたいが、どれもフライトを終えるまでは我慢だ。

 更衣室で制服に着替えると同時にもどかしさを振り切り、準備を終えるとブリーフィングを始めた。

 急きょ飛ぶことになったのは、数カ月に一度程度でフライトしている八丈島。羽田から一時間足らずで到着する離島だ。

 ここの管制は莉真が行っている。今日は生憎の雨模様でコンディションはあまりよくないが、彼女の声が聞けると思うだけで安心感が得られる。

 ペアを組むことになったコーパイは、前にも一緒になったことがある二十七歳の明るい男性。『奥さんってどんな方なんですか?』と興味津々で聞いてきた彼だ。

 今日も「また相良機長と一緒に飛べて嬉しいです!」とニコニコの笑顔で言われ、その愛想のよさのおかげで、先ほどのイラ立った気持ちも平静に戻る。

 すべての準備を整え、俺が操縦するヒノモト航空479便は定刻通りに出発した。

 どうしても避けられない積乱雲の中を飛行し、多少の揺れはあったものの大きな問題はなく予定通りの針路を進み続ける。