天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 彼は硬い表情のまま、やっとこちらに目を向ける。

「なら、この騒動を収めてみろ。差出人を見つけてあの要求を撤回させれば、お咎めなしとしよう」

 上から目線なのが気に食わないが、とりあえず異動については保留になったと解釈して、荒んだ気を落ち着ける。差出人を捜すというのだけは同意だ。

 その時、俺のスマホが鳴り、体調不良のパイロットがいるので稼働してほしいとの連絡が入った。一応話が一段落したところでよかったと思いつつ、「フライトが入った」と短く告げて腰を上げる。

 同じく立ち上がろうとする父を一度まっすぐ見つめ、真剣に訴える。

「莉真も拓朗も、今の場所に必要な人だ。こんな写真に惑わされずに、彼らの能力で判断してやってくれ」

 これは切実な願いだ。ふたりとも情報官として優秀なのは間違いないのだから、スキャンダルを理由に異動させるのはやめてほしい。

 それだけ伝えると、感情を読み取れない父より先にコワーキングスペースを出た。オフィスへ向かいながら思いを巡らせる。

 事の経緯はわかったが、莉真はなぜすべてを俺に話さなかったのだろうか。こういう事情だと知っていたら彼女を責めたりなんてしなかったし、いくらでもサポートするのに。