そうしているうちに情報官の先輩が休憩から戻ってきて、私も交代して昼食をとるために管制塔を出た。

 ターミナルビルへ向かっていた時、駐機している機体のほうから麗しのパイロットが歩いてくる。その人と視線がぶつかった瞬間、私は目を見開いた。

 制帽から覗く目鼻立ちの整った甘いマスク、制服がよく似合う背の高いすらりとした体型、その腕についている金色の四本線。

 去年、三十三歳の若さで大手航空会社の最年少機長に昇進した超エリート、相良(さがら) 暁月(あかつき) さん。声の主はやっぱり彼だったらしい。

 相良さんのパイロットとしての手腕はかなり尊敬しているし、包容力のある人柄も素敵なのは間違いないのだが、顔を合わせるのは少々気まずい。仕事中に会うことは稀だから大丈夫だろうと思っていたのに。

 ……どうしよう、会ってしまった。

 掻き消したはずの記憶が再び急浮上してきて、思わず足を止めた。私を見た彼も一瞬目を見張り、こちらに歩み寄ってくる。