天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 無情なその言葉を聞き、怒りの矛先が目の前の父に向く。

 莉真が異動を選んだ理由をようやく理解した。不倫なんて事実がなくても、俺や離婚を引き合いに出されたらそうしたほうがいいと思ってしまうのも無理はない。

 父は母に裏切られた経験があるから、莉真を許せないのかもしれない。だが、彼女に対して父がそこまで言及するのはあまりにも不条理だ。

 腸が煮えくり返り、彼を敵意むき出しの瞳で睨みつける。

「……父親として? だったら引き離したりなんてせずに、莉真を信じて守る術を考えるのが道理なんじゃないのか? 俺だけじゃなく、彼女だってあなたの家族なんだぞ」

 次第に声を荒げる俺と、父は目を合わそうとせずにただ口を閉ざしている。

「昔からそうだ。あなたはなんでも自分の都合のいいように周りを支配する。今回も同じ、ただ自分の気に入らないものを排除しようとしているだけだ。俺たちのことなんてこれっぽっちも考えちゃいない」

 これまでずっと抱えてきた不満はもう飲み込めると思ったのに、怒気を込めて吐き出してしまった。俺の大切な人まで抑圧しようとしている父に対して、憎む気持ちが再燃する。