天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 しかし、彼女は笑みを浮かべてはいてもどこか苦しげに見える。無理やり自分を納得させているように思えて仕方がない。

「君が本当にそれを望んでいるとは、俺には思えない」
「……本当ですって。それにほら、暁月さんもうすぐ技量審査じゃないですか。国際線の路線資格も取らなきゃいけないし、きっと私がいないほうが勉強に集中できます」

 へらりと笑う空元気な彼女に自分の思いとは真逆のことを言われ、つい頭に血が上りそうになる。度重なる訓練も、莉真がいるからこそ頑張れるというのに。

 テーブルに置いた手をぐっと握り、憤りをなんとか抑える。

「莉真が試験の妨げになると思うわけがないだろ。俺はそんなに不甲斐ない男じゃない」

 冷静になろうとしても声に怒気が滲んでしまい、笑みを消した莉真は罰が悪そうに目線を落とす。

「俺のためだとか言うならやめてくれ。それとも、俺から離れたいのか?」
「っ、そんなわけないじゃないですか!」

 前のめりになってすぐさま声を荒げた彼女の、今の言葉だけは本心だとわかった。切なげに眉根を寄せる表情から、葛藤しているのが伝わってくる。