天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 そう目論み、帰る前に洋菓子店に寄ってチーズスフレを買った。夕食を終えてそれを出そうとした時、莉真は最近の覇気のない様子ではなく、覚悟を決めたような顔で告げる。

「私、北海道へ行こうと思う」

 ダイニングテーブルの向かいに座る彼女の口から放たれた、突拍子もないひと言。その意図が読めない俺の口からはまぬけな声が出る。

「……旅行で?」
「情報官として」

 ふっと口元を緩めた莉真は、軽く首を振ってそう言った。俺はみるみる顔が強張る。

 情報官として……って、北海道へ異動するということか? 最近元気がなかったのは、この件について悩んでいたからだろうか。

 あまりに突然の話でついていけず言葉を失う俺に、彼女は妙に落ち着いた調子で説明する。

「新千歳で情報官が足りてないんだって。辞めちゃったり産休に入る人が重なって大変だって、ゴンさんも電話で言ってたの。新千歳では松本の管制もしてるし、私なら即戦力になれると思うから」
「待て」

 まるで用意していたセリフのようにつらつらと話すので、思わず制した。いくら人員不足だからとはいえ、莉真に白羽の矢が立つのは納得がいかない。