あっという間に七月に入り、パイロット泣かせの梅雨の時期になった。
経路上にある梅雨前線には、壁のように積乱雲が連なっているので迂回などの対応を取らなければならないし、逆にずっと雲の中を飛行する場合も多い。
普段に増して緊張の時間が続く日々を過ごしているが、家に帰れば可愛い妻が待っていて癒してくれる。結婚なんてするもんじゃないと思っていたあの頃の俺はどこへやら、ふたりの生活はかけがえのないものだとひしひしと感じている。
莉真の薬指に光る指輪も、彼女は俺のものだと主張しているようで安心感が得られる。本気で人を愛したことで、こんなにも意識が変わるとは。
ところが、数日前から莉真は元気がない。体調は悪くないらしく普通に会話もするが、どことなく表情が沈んでいる時が多い気がするのだ。彼女があからさまに気落ちしているのは珍しいので心配になる。
仕事でミスでもしたのだろうか。彼女が好きなスイーツを買っていってあげたら、少しは気分がよくなるかもしれない。



