天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「どうして、ですか?」
「たぶん、新しい一歩を踏み出したい気持ちにさせてくれたのが君だったからかな。そう思わせてくれる人は他にいなかったから、強烈に惹かれたんだ」

 真面目にそう伝えた後、「あと、酔っ払うとケンカ腰になるところがツボで」と茶化すと、莉真はいじけた子供みたいな顔になった。可愛い。

 意地悪して喜ぶのもほどほどにしたほうがいいか、なんてほんの少しだけ反省する俺に、莉真はやや呆れ交じりの笑みを向ける。

「暁月さんみたいな人も他にいませんよ。急にキスしたり、結婚を提案してきたり、毎日甘やかされたりしたら、もう好きになるしかないって感じでした」

 俺の思惑通りに功を奏したらしい。ここまでして落ちてくれなかったら絶望的だが。

「効果てきめんだっただろ。〝強引に他の男を意識させる方法〟は」
「はい。でも、それはきっかけでしかなくて」

 言葉を続ける莉真の表情が、みるみる柔らかくなる。

「暁月さんが抱えてるしこりみたいな部分を取り除いてあげたくなったし、私と一緒に幸せになってほしいって思いました。城戸さんに対しては、ただ好きっていう気持ちしかなかった。心から愛した人は、暁月さんが初めてです」

 慈愛に満ちた表情を浮かべる彼女に、ドキリとさせられた。