天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 視程についてだけでなく、先ほどの他機が問題なく通過していったという報告をしてもらえただけでも、俺たちは安心感を得られる。そのためにあえて細かく伝えてくれたのだ。

 これらの詳細な情報は、レーダー上で航空機の針路や高度を監視するレーダー管制がない松本空港では得られないもの。おそらくセスナからレポートしてもらい、彼女は自分ができる最大限の配慮をしたのだ。

 有能な管制官や情報官は各地にいるが、ここまで細やかな支援をしてもらった時は滅多になく、彼女の心遣いに胸が震えた。

 恐怖心が一気に消えたのを感じながら了解した旨と感謝の言葉を返すと、機長がどこか満足げに言う。

「ここの情報官は優秀だろう。まるで俺たちにカメラがついていて、その映像を見てるんじゃないかってくらい、こっちが欲しい情報を与えてくれる。だからこんなコンディションでも安心して飛べるんだ」
「……素晴らしいですね」

 彼の言う通りだと、口元を緩めて心からそう返した。声しか知らない彼女に、大きな尊敬と感謝の念を抱いて。