天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 俺がパイロットを目指すと宣言した時、父はわずかに動揺を見せたものの、予想していたよりは反対されなかったので拍子抜けしたのを覚えている。しかしこの頃には、すでに俺自身もその職業に魅せられていた。

 父が持っていた書籍をめくっているうちに純粋に興味を持ち、勉強すればするほど奥が深い航空業界にのめり込んでいった。

 やや荒んでいた学生時代も、この夢を持ってからは勉強に没頭し、訓練生になってからもひたすら目標に向かって進み続けた。

 順調に試験をクリアして副操縦士になってからも、同じフライトはひとつとしてないため毎日様々なことを学んでいる。

 中でも印象深かったのは、松本空港へのアプローチである。

 松本空港は進入経路が山で囲まれており、その間を縫っていくというかなり高度な操縦技術を必要とする場所。着陸するための方法が記されたアプローチチャートを初めて見た時、その特殊さに〝こんなところを飛ぶのか〟と目を疑ったほど。

 俺はなかなかこの空港に来る機会に恵まれず、初めて訪れたのは副操縦士になって七年目の秋。

 この日は山岳地帯に霧が発生していて視界が悪く、運航できないほどではないが細心の注意を払わなければならなかった。