天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

「こんなになるまで飲むなんて、悪い子だね」

 そこはかとない冷ややかさもありながらセクシーに耳元で囁かれ、ぞくりとする。口元に浮かべた笑みがやけに怖い。

 一方、城戸さんは物珍しそうに私たちを観察している。

「なんだ、ちゃんと夫婦になってるじゃん。本当に変わったんだな、暁月」

 彼が感心したような口調で呟くのを見ると、たぶん暁月さんが迎えに来たのは相当意外だったのだろう。私も驚いているけれど。

 城戸さんは〝参った〟とでも言いたげに息を吐き、挑発的に口角を上げる。

「でも、うかうかしてたら奪うからね? 俺、もう既婚者じゃないんだから」
「莉真はこれからも既婚者なんだよ」

 語尾に怒りマークをつけた調子で言った暁月さんは、後ろから私の肩に片腕を回して抱きしめる。

「俺が選んだ唯一の人だ。渡す気なんてない」

 力強く宣言され、否応なく胸が高鳴った。

 初めて独占欲を露わにされた気がする……。これも仲のいい夫婦を演じているだけ?

 そうは思いたくなくてもどかしさを感じていると、暁月さんは数枚のお札を置き、再び私の肩を抱いて「じゃあな」と短く告げて歩き出す。城戸さんを振り返ると、彼は呆れたような笑みをこぼして私に手を振っていた。