天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 航空保安大学を卒業したのは私が二十歳の時。確かにいろんなタイミングが少しズレていたら、まったく違う人生になっていたんだろう。

 城戸さんは「そんなたられば言ったってしょうがないけどね」と苦笑し、憂いを帯びた瞳でこちらを見つめる。

「俺もいい加減に諦めなきゃな、君を」
「城戸さん……」

 ずっと好きだった人が、私に好意を抱いてくれていた。本当ならすごく嬉しいことなのに、今の私はもう喜べない。もっと深く愛せる人を見つけたから。

 その時、すっかり耳に馴染んだ声が飛び込んでくる。

「莉真」

 ぱっと目を見開いて勢いよく振り向くと、やや強張った表情の暁月さんがいた。場所も教えていなかったのになぜここにいるのかと、私は呆然としてしまう。

「え……暁月さん!?」
「嘘だろ」

 ありえないものを見てしまったかのごとくギョッとする城戸さんに、暁月さんは不機嫌そうに「妻を迎えに来ちゃ悪いか」と言いながらこちらへやってくる。

 反射的に腰を上げようとしたものの身体がふらついてしまい、「あっ」とよろける私を暁月さんがしっかり支えてくれた。