天才パイロットは交際0日の新妻に狡猾な溺愛を刻む

 口元に片手を当てる私に、暁月さんはクスクスと笑った。玄関で靴を履いた彼はこちらに向き直り、一度目を見合わせてから手を伸ばす。

 後頭部を支えられ、彼の顔が近づいてきて目を見開いた瞬間、軽く唇を重ねられた。

 一瞬の挨拶みたいなものだけれど、私にとっては人生二回目のキス。みるみる頬が火照り出す。

「これで新婚っぽくなっただろ」
「……ですね」

 いたずらっぽく笑った暁月さんは、照れる私の頭をぽんぽんと撫でてから玄関のドアを開けた。爽やかな朝日を受ける彼が眩しい。

「莉真も頑張って。いってきます」
「いってらっしゃい」

 笑みを作って軽く手を振る。パタンとドアが閉まった直後、私は両手で熱い顔を覆って深く息を吐き出した。

「スパダリすぎるんですが……」

 いってらっしゃいのキスも憧れていたけれど、しょっぱなからしてもらえるとは! 自然なのに甘いしキュンとするし、なんていうかもうズルい。

 あんな彼が旦那様になっただなんて、やっぱりいまだに信じられないし、人生って本当になにがあるかわからない。