「今日のおやつは何かしら.........マカロンがいいな♡」

わたしは空を見上げ、うふふと笑った。

「あの雲 マカロンみたい。可愛い♡」

「まーた、いつもの今日のおやつ占いしてんの、花」

その聞き馴染みのある声に振り向くとショートカットの黒髪美少女が立っていた。

「澪ちゃんっ!おはよう」
にっこり笑う。

「花は今日も可愛いね 男子たちが
めっちゃ見てるよ」花ちゃんはチラッと周りに目をやった。

「ありがとう。でも、わたしじゃなくて澪ちゃんを見てるんだよ、だって澪ちゃんはとっても美人だもの!」
意気揚々と言うと澪ちゃんは照れたように赤面し
呆れたようにわたしを見てきた。

「相変わらず天然だね.........」

「え?」

「いや 何でもない」

教室に入るとざわめきがピタリと止み、男子たちの雄叫びが聞こえてきた。

「うぉーっ!! 今日も
西園寺さんめっちゃ可愛い!!」
「萌え死にするぅぅっっ!!」
「ふわふわの髪にキュートな瞳.........!!
まるで天使!!」

「うふふ、澪ちゃんってばモテモテね!」

「いや、あんたのこと言ってっから。西園寺さんって聞こえたし」

「まさか〜!聞き間違いよ!
だって澪ちゃんの方が美人だもの!!」

「まったくこの子は人をたぶらかすの
が上手なんだから」

ちょっぴり嬉しそうに笑う澪ちゃん。

「たぶらかしてなんてないわ。わたしは本当のことを言ったまでよ?」

「くっ.........可愛すぎる.........」

澪ちゃんが胸を押さえてうずくまった。

「みっ、澪ちゃん!?」

「気にしないで、花可愛すぎ症候群のせいだから」

「症候群!? 澪ちゃん何かの病気なの??」

「は? や、そうじゃなく」

澪ちゃん.........やだ死なないで!!
涙がポロポロ零れ落ちた。

「いやだよぉっっ澪ちゃん死なないでぇー!!」

「誰だ!! 花ちゃんを泣かせたヤツは!!」
「許すまじ!!」

何故かクラスの男子が騒いでいる。
あ!澪ちゃんが病気って言ったの聞こえてそれで悲しんでるのかも!!

「みんな!!澪ちゃんの病気が治るように千羽鶴を折りましょう!!」

「え?小山さん病気なの?」
「まじ?」

「ちょーーーーーーっとまったーー!!」

澪ちゃんがいきなり大きな声を出した。

「どうしたの? 澪ちゃん」

「みんな、花の言ったことは気にしないでね。あたし元気ピンピンだから!!」

にっこり笑う澪ちゃん。えっ、そうなの??
でも症候群って......... 考えていると澪ちゃんにガシッと肩を掴まれた。

「花 話があるから一緒に来て」

にこにこしている澪ちゃん。でも、
ちょっと怒ってる?


「花、いつも言ってるよね、
ちょっとは考えて発言してって」

「は、はい.........ごめんなさい」

わたしは澪ちゃんの怒りオーラに気圧されて反射的に謝る。

澪ちゃんが軽くため息をつく。
「花は鈍すぎる。いい? あたしは花が可愛いって意味で症候群って言ったの。クラスの男子たちも可愛いって話をしてたんだよ」

「えっ」
澪ちゃんわたしのことを言ってたの?
照れくさくなると同時にホッとした。

「良かったぁ〜!澪ちゃん
病気じゃなかったんだね!!」
瞳が潤む。

「あんたって子はホント良い子だ!」
澪ちゃんがわたしを抱きしめる。
そして体を離し真剣な顔でわたしを見つめた。

「いい? あんたは可愛いんだから、くれぐれも変な男に引っかからないようにね!引っかかったとしてもあたしが退治するけど」
澪ちゃんが黒い笑顔になる。
澪ちゃんコワいよ.........。

でもわたし、クラスの男子に全然モテてないし、可愛くもないよ?なんでそんなに心配するのかな?
まぁ親友を心配するのは当然だよね!
わたしも澪ちゃんのこと心配。
だってこんなに美人な子いないもの。

「分かったわ! 気をつけるね! 澪ちゃんも気をつけて!何かあったらわたしに言って。そのときはわたしが守ってあげるわ」

澪ちゃんの手を両手で包み込み
にこにこ笑ってみせる。

「んんっっっ!!可愛すぎるっっ!!」



「あの女が、西園寺花.........か.........」

そのとき、わたしは気づいてなかった。
わたしに向ける視線に。

わたしの物語が幕を開ける。