電車の中でふと思い出した。


「いけね。俺、シャー芯がなくなったんだった。学校着いてから数本分けてくんない?」

「あー、僕も残り少なかったと思う。改札を出たところのコンビニに寄っていこう」


 清算を済ませ、店を出ようとしたときだった。


 俺たちが乗ってきたのと反対方向の電車が到着したらしい。


 大勢の銀星台と月ヶ丘の制服が、改札口から吐き出されていた。


 その中にコハルとシュンペイの姿があった。


「コハルとシュンペイじゃん。あのふたり、毎朝一緒に登校してるのかな?」


 兄貴は真っ直ぐふたりを見つめたまま、『そうかもな』と答えた。


 ふたりは俺たちに気がつかないで、俺たちの前を通り過ぎていった。


 北口を出たところで、コハルが『じゃあね』と顔の高さで手を振った。


 シュンペイはぶっきらぼうに『ああ』とだけ言うと、左に曲がってスタスタと歩いていってしまった。