「髪短くしたんですね。とても似合ってます」
普段なら目上の男の人に褒め言葉なんて言えないのに、今日はがんばった。少しでも挽回できたら、と思って。
「ええっと……もしかして兄貴の知り合い?」
「っ!」
顔から発火した。
やだっ、まさか弟のほう!?
「ご、ごめんなさい! 先週、新堂マサヤさんに会って……でも私、マサヤさんともその1回しか会ったことなくて、その……」
頭に浮かぶ言い訳をどうにか紡いだ。
新堂弟は『うんうん』と頷きながら、楽しそうに聞いてくれた。
「俺はマサヤの弟で、トモヤね。もしかしてオープン・ハイスクールのポスターを貼るのを手伝ってくれた子?」
「は、はい!」
兄弟でそんな話をするんだ。
男兄弟の会話は、私には想像つかない。
「ありがとね。俺も気楽な会計とはいえ、一応生徒会のメンバーなのに、あの日は歯医者でさ」