今日に限って帰りのHRが長引くなんて!


 HRの間ずっと、私は先生の顔ではなく、先生の頭上にある時計を見つめていた。


 余裕をもって待ち合わせの時間を決めたはずだったのに、すでにその時間を10分も過ぎていた。


 今頃シュンペイは怒っているかもしれない。


 私の通う月ヶ丘女子高校と、シュンペイの通う銀星台高校は最寄り駅が同じだ。北口を出て右に進めば女子高の月ヶ丘、左に進めば男子校の銀星台。


 だから、私たちは駅で待ち合せることにしたのだった。


 学校から駅まで、走っても7、8分はかかる。


 HRが終わると同時に、大急ぎで帰り支度を始めた。


「コハル、何か用事でもあるの?」


 話しかけてきたのは、幼なじみのユズハだ。


「うん。シュンペイと約束があるの」

 
 答えながらも手は動かした。