祥汰が窓を開けようとすると、執事がひとつ、おもむろに付け加えた。


「そういえば、今日は盲目の召使いがやってくるそうですよ。」

「盲目の召使い……?」

「はい、なんでも視力を事故で失ったとか。しかし召使いとしての腕前はすばらしいと聞き、ご主人様がおもしろいと思い招いたそうです。」

「男か」

「いえ、女で御座います。それがまた美人だとかなんとか。」

「……仕事はできるのか」

「ええ、この屋敷の隅々まで不自由なく歩けるようです。杖なども使わない…と」

祥汰は意外そうに執事のほうを振り向いた。
祥汰の後ろでは、弱くなった雨が窓ガラスに打ちつけられている。

「平気なのか」

「そのようです。ただ、目を閉じたまま開かない、ということを除けば普通の召使いとさほど変わりはないでしょう。」


突然視力を失ったつらさや恐ろしさを考え、祥汰は軽く身震いをした。