いつかは、乗り越えるべき壁なのだろうけれど、お盆にも敢えて帰省しなかった。

晩夏の今になって、ようやく初めて帰省するわけだが、何とも変な感じがする。

この歳まで、ちゃんと誰かと付き合ったこともないので、当然だが、恋人を親に紹介するのも初めてのことだ。

こんなに素敵な人であろうと、相手が親となると、何だか気恥ずかしい。


約束の日、車を運転する清海さんは、車中では暑いからスーツの上着を脱いでいるが、やけに真剣な表情だ。

「なんか…緊張するね」

私が言うと、清海さんは、

「多分、僕のほうが遥かに緊張してるよ」

そう言って笑った。

何しろ、私たちの海辺の家から実家までは、県を跨ぐとはいえ、1時間もせずに着いてしまう。

駐車スペースに車を停めると、

「じゃあ…行きますか」

緊張した面持ちで、清海さんが言うので、私も頷く。