夢の事もすっかり忘れていたある日

 「燈花(とうか)ちゃん知っている?今日学校で習ったんだけどね、聖徳太子って人はいなかったかもなんだって!」

 と10歳の姪が得意げに言ってきた。

 「そんなことはないでしょう?」

 私も少し大袈裟に答えた。

 「でも今日、社会の時間に先生が言っていたよ、聖徳太子が居ないだなんて、なんだかガッカリ…」

 10歳の姪っ子が残念そうに言った。

 「そんなはずないと思うけど…」

 私も急に自信が無くなってしまった。正直この時まで聖徳太子にも古代の歴史にも興味を持った事がなかった。でもこれをきっかけに妙に聖徳太子が気になり始めた。

 彼は本当に実在したのだろうか??文献を読み漁ったりネット検索をする日々が続いたが、やはり真相はわからない。けれど私は彼が実在の人物であることを信じたいと思った。

 ある夜のこと、その日も布団にくるまると携帯をとり聖徳太子に関する事柄を飽きもせず調べていた。そしてある1枚の画像が目に飛び込んできた。あまりの衝撃に息をのんだ。数ヶ月前に夢の中で訪れた場所にそっくりだったのだ。

 この場所に行ったことがある…夢の中で確かに私はここに居た…間違いない

 その画像を見れば見るほど夢の記憶は確信へと変わった。この場所はいったいどこなのだろうか?詳しく調べると更に驚いた。その場所は聖徳太子の叔母である、推古天皇の墓陵だった。あまりにも予期せぬ答えに頭の中が一気に真っ白になった。

 今まで生きている中で古墳に対し興味を持ったことも、ましてや訪れた事も一度もない。更に別の画像にも目が釘付けになった。それは上空から撮影されたもので、茶褐色の大地に二つの細長い人型のような穴が地面に掘られている。

 この光景にも見覚えがある…というか、見た…

 あの日見た夢の中の景色が鮮明に浮かび上がった。明日香村近くに実在する植山古墳だ。この古墳は推古天皇とその子息竹田皇子の合葬墓であったのではないかと言われている。

   二つとも推古天皇のお墓だ…

 いくつもの疑問が頭の中でぐるぐると回り始めた。ただこの二つの画像から何か縁のような、強く引かれる力を感じた。

 どうにもこうにも推古天皇に呼ばれているような気がしてならなかった。その晩、私は不思議な感覚に襲われ、なかなか寝付く事が出来なかった。