そんな時、聞こえない振りをしていた言葉が耳に入ってきた。
「姫華って、ブサイクだよね」
「よく美香ちゃんと話しているけど、美香ちゃん可哀想w」
「……」
「わざわざ、関わらなくてもいいのにねw」
「……」
トントン
「ん?」
私の肩を叩いたのは、美香ちゃんだった。
嫌な言葉は無視しろ、ってことね。
だけど……聞こえてくるの。
「ごめん、私ちょっとトイレ行ってくる」
私は、瞳に涙を溜めながら教室を飛び出した。
辛い……もう、辛いよ。
もう、普段の姿に戻ろう。
もう……いいよね。
ずっと、封印していた〝冴えない女子〟から本来あるべき姿に戻る決意をした。
私は、誰もいない廊下で立ち止まり被っていたウィッグを外し、茶色のコンタクトを取る。
鏡に映る本来の私の姿。
手に持っているダサいウィッグとコンタクトを近くのゴミ箱に捨てて教室に戻ると、私の悪口を言っていた女子達が汚れていることに気がついた。
それは、直ぐに分かった。
「美香……ちゃん」
私の為に……ありがとう。
「!え!姫華?!その格好?!大丈夫なの?!」
私はコクンと頷いた。
もう、辛いことが分かったから。
私には、耐えきれないよ。
美香ちゃんは、いつでも私が困っていると助けてくれる優しいお姉さん。いや、お兄さんなのかもしれない。
案の定……
クラス内では、
「ぇぇええええ!!!アイツが、姫華?!」
「ちょー美人なんですけど」
「みんな、黙ってて……隠してて……ごめんな、さい(泣)」
みんなも謝ってきた。
それからは、クラスメイト達からも他クラスからも人気が出て〝学校一の美少女が居る〟と噂になった。