ハンガリーからの留学生ジェシー。

 ジェシーは日本語が超ペラペラ!

 外国人だということを、まるで感じさせない。

 そんな彼女はもうすぐ国に帰ってしまう。

 そこで、日本のお土産を買いに行くことになった。



「わたし、桜柄のお茶碗が欲しいんですよね~」



 なるほど。

 OK! 

 じゃあ、陶器の専門店にレッツゴー!

 ……しかし、なんでジェシーはお茶碗なんて欲しがるんだろう?

 ハンガリーにも、炊飯器ってあるのかな?

 ご飯炊いて食べるのかもね。

 ちょっと疑問に思いつつも、
 ちょうどよい大きさの、
 桜にうさぎも一緒にいるお茶碗を発見!

 これはいいんじゃないかな?



「ジェシー、あったよ。お茶碗」



 はい、とジェシーにお茶碗を手わたす。

 が、ちょっと微妙な顔をされた。



「んー、たしかにかわいいですね。
でも、わたしが欲しいのはお茶碗なんですよね……」



 ……え? 何それ。
 
 これ、どこからどう見てもお茶碗だよね?



「あの、ジェシー? 
お茶碗買って、ご飯でも食べるの?」

「違いますよ。
わたしが欲しいのは、お茶碗なんです。
ほら、お茶を飲むやつ!」



 ふたりで顔を見合わせる。

 わたしたちの頭の上には、ハテナマークがとびかっていた。

「えっ?
お茶を飲むのって、マグカップ? 
ティーカップ?」

「違います。もっと日本的な……。
こうして、お茶を飲むんです」



 ジェシーは、手で筒をつくり、ぐいっとあおってみせた。



「……あ!
それってもしかして、お茶碗じゃなくて……。



湯のみ⁉」




「えっ、湯のみ?
お茶碗じゃなくて?
『お茶』を飲むのに『湯』って言うんですか⁉」



 しばしわたしたちは見つめ合い、それからどちらからともなく笑い合った。

 日本語って、ややこしい!     


 オワリ