隣町での視察を終え、帰路につく頃には、太陽は既に水平線の向こう側に沈みかけていた。


(馬車に乗れば、ヴィヴィアン様は少しは休めるだろうか?)


 きっとものすごく疲れただろう。傍から見ていた俺でさえ、とても疲れてしまったのだから。
 ゆっくりと休んでほしい。俺が心からそう思ったそのときだった。


「おーーいエレン、護衛は帝都まででいいってさ。ヴィヴィアン様は城に帰る前に寄り道をなさるそうだよ」


 護衛騎士の一人と打ち合わせていた先輩が俺にそう教えてくれた。思わぬことに、俺は目を見開く。


「今から寄り道ですか? 帝都に着くのは夜遅くになるのに……というか、危険なのでは?」


 ヴィヴィアン様の身体が心配だ。そんなことをして、大丈夫なのだろうか? 俺は顔をしかめてしまう。


「なんでも、今日じゃなきゃ意味がない用事があるんだそうだよ。城に帰っていたら間に合わないんだってさ。言い出したら聞かない方だそうだし、帝都に帰れば警護が手厚くなる。俺たちは気にしなくて大丈夫だよ」

「そうですか……」


 俺はため息をつきつつ、ヴィヴィアン様の乗る馬車を見つめた。