事情も知らない奴等が面白がって流した噂から、実家からの勘当や。
 婚約破棄された同僚の騎士はノイローゼ状態で、自害したと言う。

 男は侯爵令嬢誘拐と本物の護衛を殺めた罪で服役するだろうが、ランドールの件に関しては、コルテス侯爵家が責任を持って、彼と亡き同僚の名誉回復に努めることを約束すると、初めて男は泣きながら名乗ったそうだ。


 それから先日の夜会のことをふたりは話していた。
 王太子殿下の生誕記念夜会で、オスカーは王弟ではなく、臣下として仕えると皆の前で宣言したのだ。

 夜会の一件に関しては、ロザリンドは何も知らされていなかったようで、驚いていた。
 君が頼んだから、とオスカーが言ったからだ。


「……私が頼んだ?」


 オスカーの隣に座るグレンジャーの赤い瞳が面白そうに輝く。
 黙って微笑んでいるオスカーの代わりに、グレンジャーが答えた。


「あの日さぁ、朦朧としていたんだろうけど、私は黒髪萌えなの、ずっと黒髪でいて、って何度も繰り返してたよ?
 王族になったら金髪に戻さなきゃ、だろ?
 恋人にあれだけ言われたらねぇ~
 オスカーは一生、黒髪のままでいるそうだよ」