攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!

 学苑の皆に義妹との仲を誇示する様な、この急激な外堀の埋め方は、オスカーらしくないな、と思った。


 自分のタイを締めているピッパに、彼女のリボンを手首に巻いたグレンジャーはあやふやに笑うしかなかった。


  ◇◇◇


 学苑は一日中、オブライエン兄妹の噂で持ちきりだった。
 
 下校時間になり、今度は迎えに来たロザリンド嬢の侍女が、オスカーの名前を叫びながら、大騒ぎしている、と言うのだ。

 グレンジャーはまだ教室に居た。
 彼とオスカーが親しくしているのは、皆知っていたから、魔法科棟までアランが走ってきて、侍女の騒ぎを教えてくれた。


「義妹が拐かされた?」

「最初はそんなことを言って、オスカーを呼び出そうとしたらしいんだが。
 あいつが居ないから、今はとにかく助けて、とそれだけ……」

「何でっ! オスカーはどこに居るんだよ!?」


グレンジャーがアランの制服の袖を掴んだ。


「お、俺だって、実習があったから、今聞いたところだ!」


 午後の授業は専門実習が多くて、騎士科のアランに言っても仕方がないのに、詰め寄ってしまった。