今年の仮面祭りも2ヶ月先だ。
 それなのに、来年の話かよ、とグレンジャーは思った。


「俺にさ、魔法を掛けて貰いたくて……
 詳しくは追い追いに話すから、当日に会う場所はどこでもいいよ。
 グレンの予定だけは空けといてくれないかな?」

「ん、分かった、何の魔法掛けるかは、早めに言ってくれよ?
 出来ないことを言われても困るし」

「大丈夫、グレンなら出来る」


 随分と先の予定を入れられた。
 オスカーだから、何か考えがあるんだろうけれど……
 また、出来ると言い切られた。



 その後、その年の仮面祭りの前日に。
 来年髪の色を変えて欲しい、と言われて。
 やっぱり、来年なんだ……と思いながら、オスカーの魔法耐性を確認するために『視た』。


 彼には、既に魔法が掛けられていた。
 誰に掛けられたのかも、残っていた魔力の痕跡から分かった。
 

 強力な外部攻撃に対する保護魔法と、髪色を金髪から黒髪に変えていた。
 何故か、内部攻撃には効力を発揮しない、半端な保護魔法。

 
 
 その魔法を掛けたのは、グレンジャーの親父殿だった。

 視えた事実を、彼は。
 親友にも、養父にも、どちらにも伝えなかった。