……本当は分かってる。
 こんな街中で、魔法でこいつを倒したら。
 停学どころじゃすまない。
 親父殿にだって、迷惑がかかる。
 だけど、だけど……


「グレンならさ、記憶の書き換え出来るだろ?」


 またしても、オスカーが小さな声で尋ねてくる。
 記憶の書き換え?
 そんなこと、したこともない。


「出来るよ、グレンには出来る。
 俺がこいつを違う場所へ誘導するから」

「おい、お前等、何をぐちゃぐちゃ相談してんだよ?
 ちょっと金貸せや」

「ぼ、僕は……」

 気弱に言いかけたカールの言葉を遮る様に、オスカーが一歩前に出た。


「ここでお金のやり取りをするのは、ちょっと……困るんです。
 場所を変えて貰えませんか?
 貴方が絶対に僕等を殴らない、って約束してくれたら、お金で解決するのにやぶさかではありません」

「や、やぶさか?
 ……金を払うんなら、ここから動いてもいいけどな。
 お前、舐めた真似すっと、俺にはバックにもっと怖ーいお兄さん方が居て、学苑まで乗り込むからな?」


 違う場所に誘導する、と言ったオスカー。
 それから記憶の書き換えをしろ、とも。
 それはつまり、人目のつかない違う場所でビルを痛め付けてから、その記憶を書き換えろ、って?
 俺達の記憶をビルから消せ、って?


 今までのオスカーからは、そんな悪どい考えをする奴とは思ってもみなかった。