中等部は高等部より校則が厳しくて、放課後に何処かへ寄るのには届け出が必要だ。
 許可がないと貴族学苑中等部の制服は高等部のそれとはデザインが違うので、都民に学苑へ密告されるおそれもあり。
 学苑側は無許可で放課後に遊びに行く生徒を徹底的に調べあげて、停学処分にするのだ。



 無事に文房具を購入し、解散するか、となった時。


「よぉ、グレン。
 何だよ、お前、その格好はよ!」


 忘れもしない声だった。
 ビル、そばかすだらけのビル。
 孤児院で、やたらと威張っていた5歳年上の。
 あの日万引きを命じた、苛めチームのリーダー。


 18歳になって、孤児院から出されたビルが今どうしているか、なんて知らないし、興味もなかった。
 カーネルに引き取られてからは、あの場所には近寄りもしなかったから。

 何の仕事をしているのかも。
 もしかしたら無職かも。
 平日の午後、まだまだ世の中は働いている時間だ。
 ビルはお似合いの女を連れていた。


 女の前だから、いい格好したかったのだろう。
 『俺は貴族学苑の生徒に知り合いが居るんだ』と。


 いきなり現れて、グレンジャーに偉そうな物言いをする大柄なビルに、カールはビビったのか。
 オスカーの後ろに隠れた。
 そのオスカーは、と言えば。

 相変わらず何を考えているのか、読めない表情でビルを見ていた。