「いいんちょーさ、」


氷上くんはずっと前にいる先生に気づかれない程度の小さな声で続ける。


「ファミレス、楽しかった?」


へ?

予想外のことを聞かれ拍子抜けした。


「うん、楽しかったよ」

「・・・・・・そっか」


なんだか元気がない気がするけど・・・


「あ、氷上くんは?藤堂さんとデート、楽しかった?」

「・・・・・・俺たちのことはいいから」


急に氷上くんの纏う空気が変わった。


それ以上聞くな、これ以上踏み入れるなと線を引かれたような気がする。


恥ずかしいから話したくないとかそんな理由ではなさそうだ。


「ごめん」


無神経だったかな。


そんなに触れて欲しくないことだった?


私たち庶民に話したって無駄?



氷上くんの初めての拒絶に、胸がチクッと痛んだ。