御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?



講堂に繋がる渡り廊下に辿り着き、一旦止まって呼吸を整える。


はあ・・・はあ・・・


一歩、一歩、講堂の扉へ近づく。


ドッドッドッ


進むにつれ心臓の拍動が強くなっていく。


大丈夫。


絶対、大丈夫・・・。


そう自分に言い聞かせ、すくみそうになる足をなんとか前へ前へと動かした。



「〜〜〜っ」


講堂の扉の前に着くと、中から話し声が聞こえてきた。


息を潜めてそっと耳を澄ます。


「黒崎、さっきからダンマリじゃ何もわからないよ?それとも全部肯定してるってことかな?」


琳凰くんの声だ。


よかった・・・・・・無事だ。


黒崎って言った気がするけど、


黒崎って、あの藤堂さんの親衛隊隊長の黒崎くん?


「・・・・・・ハハハッ。バレてしまっては仕方ないですね・・・。氷上様、あなたには・・・これを受けてもらいましょうか」


「っ!お前っ!」


琳凰くんの焦る声が聞こえて、反射的に勢いよく扉を開けた。