「おい、氷上っ、いい加減にしろよ」
加瀬くんが氷上くんを制しても、氷上くんは聞く耳を持たず私の返事を待っている。
「いいんちょー?」
なんで、私・・・
さっきまで加瀬くんの手を掴もうとしてたじゃない。
どうして振り払わないの・・・
っ・・・・・・。
「ごめんなさい!!」
氷上くんに握られている腕を引き抜くと、ドレスの裾を持ち上げその場から逃げ出した。
「っ、いいんちょっ」
「高沢!」
二人の呼ぶ声が聞こえたけど、足を止めることなく人ごみを縫って出口を目指す。
無理だよっ・・・
あの状況でどちらか選ぶなんて・・・
今の私には、やっぱり無理だ・・・。
氷上くんを目の前にすると、私の決心なんていとも簡単に揺らいでしまうんだ。