無口な彼、お利口な彼女

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清掃の時間、詩織は自身の持ち場を急いで片付けて、未央のところへ飛んできた。

「詩織?なんかあった?」

「...梶ぃ!!!」

「へいっ!!」

詩織は未央の面前に着くなり、クラスのムードメーカーである[[rb:梶良太郎 > かじりょうたろう]]を呼びつけた。

「梶、あんたバスケ部で神木淳平とよく絡むんだろ?どうなのよ、正直」

「え?神淳?あっもしかして、コッチすか?」

「ばか、奴はストレートだよ。ここに彼女いっから」

「...ええっマジかよ!!
 たっ、え、うそ」

詩織が目で制すと、梶は思わず自らの口を掌で覆う。以降、声量を落としてやり取りを続けた。

「高橋さんと神木が?うそうそ、いつから?
 最近の話?それはさすがの俺も気づかんかったわ」

急に話を振られて未央が固まってしまっていると、察した梶はすぐさま本題に戻った。

「正直言うとマジであっちの人かと思うくらい、やましい行動はないよ、奴には。そもそもあんまり自分から喋るタイプじゃないけど。とにかくバスケが好きなんは伝わってくる」

「そうなんだ..」

「んーー、、俺が思うに、キャパが人一倍少ないんじゃねぇかな」

「キャパぁ?」

「そ。要領悪いっつーか。バスケやってっとき以外はナマケモノみたいだもん。
 ..それはそれでカワイイんだけどさ。
 想像するに、得意なこと以外は頭の回転が格段に遅くなって、気付いたら今日が終わってる、みたいな。そんなとこなんじゃねーかなぁ」

「あー梶でいう学業みたいなとこ?」

「そ、今週も全教科宿題忘れかましてさー、おれたぶん高校生向いてない🥺
 コラ」

「...。」

「高橋さん、静かにドン引きするのやめて〜」

「全教科はさすがにあたしも引くわ」

「しおりん〜〜〜」

未央は、自分の愛想笑いが引き攣るのを感じた。側から見てもそれが淳平の素なのであれば、救いがない気がする。

「なんでモテ野郎のためにおれここまで捨て身になってんだよ〜」

「やっぱアイツモテるよね」

「え、そうだよ。だってツラいいっしょ。タッパもあるし。毎日毎日、(じょ)バレのお姉様方の話題の的よ」

言いながら、チラチラと好奇の視線が未央に投げかけられる。「ヤツの彼女に対する扱いはどんな感じ?」「キスはした?」等等、しかし、“普段の神木から察するに、未央に対して神木がキャパを割いていないのだろう”という梶の予想も伝わってくる。未央は内心、その通りなので居心地が悪かった。


「アイツの中の、バスケ以外の優先度って、どうやってあがんのかな」

「まぁこればっかりは...価値観は人それぞれだしな..。

んー、既にやってたらごめんな、
“こっちはあなたの優先度メッチャ高いよ”ってこと、もっとアピるのが良いかもしんない。

根っこは周りを気遣える良いヤツだからさ。そういう態度に気づいたら、少なくとも自分の振る舞いを見直すくらいはすると思うな」


(優先度、か...)

ケジメをつけるには良い、と未央は思った。
(結果、良いほうと悪いほう、どっちに転ぶかはわからないけれど..)

「梶くん、ありがとう」

「全っっ然だよ高橋さん!」

「あんた、たまにはいいこと言うじゃん」

「だろ?見直した?」

「ハイハイ。あと、わかってるだろうけどこのことは秘密でお願いね」

「そこ2人が付き合ってることよな、おけ」

「…梶はフッ軽だし、その割に口堅いし。黙ってりゃいい男なんだけどなぁ」

「え〜〜減点ポイントどこ?」

詩織と梶のハイテンポなやりとりを蚊帳の外に聞きながら、未央は静かに決意を固めていた。