ある日、花瓶に生けた一輪挿しの赤いチューリップを部屋に飾るすみれに、迫田が言った。

「花が飾られているだけで、部屋の印象がこんなにも変わるものなんだな。」

「そうですね。部屋が明るくなります。」

「君がこの家に来なければ、そんなことも気づけなかった。」

「それは良かったです。」

「・・・綺麗だな。」

「はい。私はチューリップが大好きなんです。綺麗で可愛いでしょ?」

「うん。綺麗で可愛いのはチューリップもだけど・・・」

「え?」

すみれが聞き返すと、迫田は大きく咳払いをして話を変えた。

「ああ、そうだ。ひとつ提案があるんだが。」

「何ですか?」

「これからは君も夕飯をウチで食べていかないか?せっかくの君の手料理も、ひとりで食うのはなんだか味気ない。君も自宅へ帰ってからまた夕食を作るのは二度手間だろう?」

「・・・・・・。」

迫田の申し出を聞いて黙ってしまったすみれに、迫田が眉を下げた。

「いや、もし君が良ければの話だ。無理にとは」

「食べます。迫田さんと一緒に夕食、食べたいです。」

「・・・そうか。じゃあ今日からでも。」

「はい!」