私はこれからどうなるのだろう。

昨夜、大人達がリビングですみれの行く末について話すのを、陰でこっそり聞いてしまった。

すみれの母の妹である叔母の靖子が声高に「ウチは子供が二人いるから無理。とてももう一人世話なんて出来ないわ。」と訴えかけていた。

それを聞いて他の大人達も心底困ったような顔をして、ため息をついていた。

伯父の勝も「もう少し下りる生命保険額が多ければ考えるんだけどな。」と肩をすくめた。

ふいに「児童養護施設」という言葉をすみれの耳が拾った。

親のいない、または親が世話をすることが出来ない境遇の子供が暮らす施設。

どうやらすみれはそこで生活することに、大人達の話し合いで決まったようだった。

両親を失った深い悲しみとともに、これからの自分の行く末を思うと、すみれは不安で胸が塞がれた。

葬儀場には交通事故で亡くなった若すぎる夫婦の死を悼みに、大勢の弔問客が列をなしていた。

どの人も同じような黒い装いで、同じような顔をしていた。

それは同情と哀れみと、自分ではなくて良かったという安堵が混ざり合った顔。

葬儀が始まり僧侶が読経を始めるとともに、弔問客が神妙な顔でお焼香を始めた。

列の中には学校の先生やクラスメートの母親といった、すみれの知っている顔も沢山あった。

葬儀中、すみれは所定の椅子に座って、弔問客に頭を下げ続けていた。

葬儀が終わると、人々のため息と囁き声で淀んだ葬儀場の外へ出て、冷たい空気を胸一杯に吸い込んだ。

身体も心も氷のように冷え切っていた。

白い菊の花が雨に濡れて雫を落としているのをただみつめていた。

このまま雨が身体を溶かし、水たまりとなり、太陽の光で蒸発して、空へ帰してくれればいいのに、そう思った。

どうして事故のあったあの日、我儘を言ってでも、微熱のあった私を置いて買い物に出かけたパパとママに付いていかなかったのだろうと、すみれは自分で自分を呪った。