クラル様とギルバートさんの会話を聞いて、父様が呆れたように言う。

「……ふふ。楽しませてもらったし、僕はそろそろ帰る。またな」

ギルバートさんは、そう言って部屋を出てった。

「そうだ!解呪の笛!まだ返してもらってない」

何かを思い出したかのように、ティムは声を出す。その時、ギルバートさんが部屋に戻ってきた。

「これ、お前のだろ。廊下に落ちていたぞ」

そう言って、ティムに解呪の笛を手渡したギルバートさんは、再び部屋を出てく。

「……あれ?ここ、どこ……?」

そんな声が聞こえてきて、僕は声がした方を見た。そこには、何が何だか分からないと言いたげな表情をしたビオラさんがいる。

「ビオラ、大丈夫?」

ルカさんが声をかけると、ビオラさんは「父さん?どうして……」と首を傾げた。

「……」

「何も、思い出せない。思い出そうとすると、頭が痛くなるんだ」

ビオラさんの言葉に、父様は「なら、言わない方が良さそうだね……」と呟く。その呟きを拾ったルカさんは、無言で頷いた。

……思い出そうとすると、頭が痛くなる……いずなと出会うまでの僕みたいだ……。

『主人、ただいま戻りました』

八咫烏の声が聞こえてきて、僕は八咫烏の方を向く。

「……えっと、八咫烏……だよね?」