「僕は、本気で大賢者になりたいわけじゃない。確かに、大賢者になればもっと強くなれると思う。でも、僕はクラル様たちの戦闘を支えられるだけの強さがあればいい。僕が本当にやりたいことは、魔法薬を作りながら、クラル様の側近を続けることだから……」

僕は、見つけた答えをレイチェルにぶつける。それを聞いたレイチェルは、ふっと優しく微笑んだ。

「上出来です。ようやく、あなたの本当の気持ちに気づいたようですね」

レイチェルの言葉に、僕は「え?」と首を傾げる。

「私は、ずっと前から気づいていました。本当は、大賢者になりたいわけじゃない。皆を支えられるだけの強ささえあればいいと心の奥では思っていることに」

「レイチェルは、それを分かってて、僕にあの質問を……?」

「もちろんです。明確な理由がないと、強くなっても意味がありませんからね。この世界に来てから、このことで悩んでいるようでしたし、ちょうど良いかと……さぁ、主人。戻りましょうか。皆さん、主人の帰りを待ってます」

そう言って、レイチェルは僕に片手を差し出してくる。

「待ってよ……戻るって、元の世界に?八咫烏からの試練があるんじゃないの?」

僕が質問をすると、レイチェルは「実は、もう合格しています」と答えた。