「……大魔王って、魔王たちを束ねるという……」

久しぶりに聞いた単語に、僕は反応をした。

僕もクラル様も父様も、そして他の魔王も大魔王と会ったことはないんだよね……。

『クラル様、ダメです。大魔王とお会いするのは』

そう言って茂みから飛び出してきたのは、呪具の化身であるいずなだった。

『……遅かったか。あれは、完全に……』

いずなは、そう呟いてビオラさんをじっと見つめる。

「……ねぇ、いずな」

クラル様が、いずなの方を向く。その瞬間、クラル様は倒れた。

「クラル様!?」

倒れたクラル様にビオラさんが近づこうとするのが見えて、僕はクラル様を庇うように立つ。

「クラル様に、何をした!?」

「何って……この、呪具である剣で眠らせただけだよ。やっと、効いてくれた」

「……呪具?ということは……」

ビオラさんは、呪具による呪いのせいで様子がおかしくなったってこと?

「仕方ないなぁ……ルーチェの件は、今度でいいか……というわけで、ルーチェ。そこ、退いて」

「退かないよ」

ビオラさんは「だと思った」と笑うと、僕に手をかざす。次の瞬間、風が吹くと同時に僕は吹き飛ばされた。

……そうだった。ビオラさんは、魔導師だから魔法が使えるんだった……。

「ルーチェ様!」

僕の体を、リルが受け止めてくれる。

「ルーチェ様、大丈夫ですか?」

「リル、助かったよ。ありがとう」