だけど、自分で選んだ道なのだからと、辛いながらも今も懸命に働いている。

自分の思い描いていた夢に蓋をして...。

「美琴さん、お客様の布団のシーツが足りないから、急いで物置部屋から取ってきて」

「は、はいッ」

女将に頼まれ、急いで旅館の奥の物置部屋へと向かった。

私が物置部屋へ向かっていると、奥の空室の部屋の扉がガチャリと開いて誰かが出てきたので思わず足を止めた。

そこから出てきたのが、庄ちゃんだった。

何故、庄ちゃんが空室の部屋にいるのだろう?

私は不思議に思い「庄ちゃ...」と呼ぼうとして口を噤んだ。

庄ちゃんの後から旅館のスタッフの真澄ちゃんが一緒に出てきたのだ。

その瞬間、私の胸がざわざわと騒ぐ。

真澄ちゃんは高校卒業後、すぐにこの旅館で働きだしたので、まだ19歳という若さだ。しかも、今までも初々しくて甘え上手な真澄に庄ちゃんもデレデレしていて、私はもやもやすることが多々あったのだ。


仲良さげに部屋から出てきた二人は廊下で立ちすくむ私に漸く気づく。

「み、美琴ッ。なんでこんなところに?」

庄ちゃんは明らかに焦っている。

「庄ちゃんこそ、真澄ちゃんとこの部屋で何をしていたの?」

私は震える声で問いただす。