『昨夜未明、観光名所でも有名な○○県〇×市白滝町の蛇巣山(へびのすやま)の山頂にある蛇神石(じゃしんせき)が雷に打たれ、真っ二つに割れているところを地元の住民によって発見されました。
蛇神石(じゃしんせき)は、戦国時代、白蛇の妖怪が人間に化け、戦国一の美女と言われた松姫を惑わせたことで陰陽師によって封印されたという言い伝えがあり...』

旅館の客室の清掃をしていた私は、ふとつけっぱなしになっていたテレビから流れるニュースに目を止めた。

蛇神石が割れた···───?

割れた蛇神石がある山は、ここ白滝町の観光名所の一つだ。
そう高くない山だが、山頂にある直径2メートルほどの岩が夜になると月の光を受けて青白く光りを放つのだ。
その神秘的な光景を一目見ようと多くの登山客が各地から観光に訪れるほどだった。
その岩には遥か昔、陰陽師によって白蛇の妖怪が封印されているという言い伝えがあるのだ。
白蛇は最高の霊力を持つと言われ、金運、財運をもたらすとされている。訪れた人が宝くじに高額当選されたことでテレビに取り上げられたことから、さらに沢山の観光客がこの町にお金を落としてくれるようになった。
まさに、蛇神石さまさまだ。
この蛇神石の恩恵を受けているのは私が働いているこの旅館も例外ではない。

ああ···

このニュースを見たら、きっと女将の機嫌がさらに悪化するに違いない。

私は女将の苛立った顔を思い浮かべて、大きくため息を吐いた。