わたしの詠唱とともに床にあらわれたのは、
 複雑な黒い魔法陣。

 そこから、空へ向かって黒い雷のようなものが立ち上った。

 あらわれたのは、人、だった。

 ただ、人と違うのは、その耳が長く、先がとがっていること。

 わたしからは後ろ姿しか見えない。

 長い銀髪。

 細身だけど、がっちりとした体を包む、黒いコート。
 
 これが……、「魔王サーペントス」?

 観客席は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。



「魔王だと!?」

「お試しダンジョンにも存在したのか!?」

「お、王女様が呼び出したんだよな?」

「ってことは……。
王女様は、魔王をも味方につけてたってことかよ!?」



 顔には出してないけど、わたしの内心も、そんな感じです。

 召喚できるのが当たり前ですよ~って顔をしておきながら、
 冷や汗だらだらですとも。