ただ一言、「そう」と言えばいい。

 でも、言葉が出てこない。

 今までの思い出が、脳裏をかけめぐる。

 そりゃあ、たいへんだったよ。ものすごく。

 命の危険を何度も感じたもん。

 これも管理人の仕事なの!?

 って、くじけそうになった時が、何度もあった。

 それでも……。

 楽しかった。

 マオの手がすっとのびてきて、
 いつの間にか流れていたわたしの涙をぬぐう。

 そうだよ、楽しかったんだ。

 モンスターたちと仲良くなって、その力になれてうれしくて。

 さわがしくも個性的な管理人仲間との触れ合いが楽しくて。

 いつも一緒に行動してくれる、ヴァンが頼もしくて……。

 なにより、そのヴァンに、初めて恋をして。

 ――嫌になった時なんて、一度もなかったんだ。



「もう一度聞くぞ。
このダンジョンの管理人が、嫌になったのか?」