マオは、わたしが話し出すのを待っていてくれていた。



「あの、ね。わたし……」



 そこで、いったん言葉を切る。

 なかなか次の言葉が言い出せない。

 マオは黙って、待っている。



「わたし、管理人、やめたいの」



 なんとか声をしぼりだした。



「……そうか」



 マオは静かに言った。

 驚くこともなく、いつも通り、冷静沈着に。



「どうしてか、聞いてもいいか?」

「……やっぱり、
わたしには管理人の仕事は、たいへんすぎて……」



 そう、管理人の仕事はたいへんだ。

 掃除する場所は、ものすごく広いし。

 人間とはまったく常識の違う、モンスターたちの苦情や、困りごとを聞いてあげて。

 トラブルがない日はないってくらいで、ダンジョンをかけめぐって……。



「だから、もう、無理かなって。思ったの」

「……嫌になった、というわけか」