「あいかわらず、おまえ、大事なところの話がぶっとんでんだよ。
なんでそんな考えにいたったのか、説明しろ」



 うん、ごもっとも。ヴァンの言う通りだね。



「つまりだな、おまえがエートの血を飲むことを、儀式化するんだ」

「……まだわかんねーな」



 ヴァンがわたしの方をふりむいたので、
 わたしも肩をすくめて「わからない」と同意してみせる。



「マオ、いきなり儀式なんていわれても……。
ちゃんとした理由があるんだよね」

「ああ。理性をたもちつつ、
ヴァン自身の意思で魔王化したいんだろう? 
そういうのは、魔王化する時に、
本能にある種の条件をすりこませるのが一番なんだ。
いわゆる条件付けだな」

「うーん……」



 聞いてみたはいいものの、まだよくわかんない……。

 ヴァンも、そんな顔をしている。 
 マオはそんなわたしたちを見て、
「どういったものか……」とつぶやいた。



「ヴァン、おまえがおれの血を『食事』として飲むときは、
必ず正面から抱きついてきて、
おれの首筋に牙を立てるだろう?」

「うえっ!?」

「……!」



 ヴァンがすごい声を出し、わたしは驚きで固まった。

 なんか、ものすごいことを聞いたような気がする。

 マオはいつもの通りに表情が変わらないが、
 ヴァンの顔がかあああっと赤くなっていく。



「な、なんで今そんな話をエートの前でわざわざ言って……! 
エート、別におれ、好きでマオに抱きついてんじゃないからな! 
ただ、ガキのころからそうしてたっていうか、
赤ん坊のころからそうやってマオの血を飲んでたから、
それがそのまま……」



 めちゃくちゃ早口でまくしたてるヴァン。

 なんだか、貴重だ。