「おまえに、そんなことできるわけないだろ!」
「なんでよ!?」
「それは……。ああ、クソッ!」
ヴァンは、ぴたりと暴れるのをやめた。
そのまま、ずるずると床に座りこむ。
わたしも、ヴァンの腰にひっついたまま一緒になって床にたおれこんだ。
「……座れよ」
「逃げない?」
「……逃げねーよ」
ヴァンは力なく言った。
わたしは、そっと腰から手をはなして、ヴァンと向かい合わせになるように座る。
ヴァンは立てたひざに顔をうずめていた。
「見ただろ? おれの目と耳」
「……うん」
「それにおれ、おまえに魅了(チャーム)の魔法をつかっちまった。
血を、全部差し出せって」
あれは、魅了(みりょう)魔法だったのか。
授業で、そういうのがあるということは知っていた。



