「げほっ、ごほっ、すごい煙……!」



 わたしは思わずせきこんだ。やっぱり、火事じゃん!

 黒い煙が視界をさえぎって、ドアの向こうは何も見えない。



「おら、中行くぞ、エート」



 そう言って、ヴァンは先にドアの内側に入って行ってしまった。わたしはあわてて後へ続く。



「え?」



 足元から伝わる、じゃり、という感触。見ると、下は地面だった。


 さっきまでは、木の板の廊下だったのに。



「あれ?」



 おかしいな、天井がものすごく高い。しかも、岩だ。ごつごつしてて、岩のつららがいくつもある。



 そして、暑い。なんという暑さだろう。まるで、真夏のような、いや、それ以上だ。



 肌がヒリつくくらい、じわっとした暑さが襲ってくる。



 燃えていたのは、どうやらそこかしこに生えている、ススキのような長い草のようだった。乾いているからよく燃えたのだろう。



 ん? 建物に、草?



 煙が少しずつ晴れていって……。



 目の前に見えたのは、広い、広い石づくりの空間。



「……ええーー!?」



 ここ、完全に洞窟じゃん! 部屋じゃないじゃん!

 後ろを見ると、何もない空間にいきなりドアが浮かんでいた。

 ドアの向こうには、さっきまでいたマンションの廊下が見える。

 何これ!?