先回りしようと思っているのか、ヴァンはものすごい速さで走っている。

 必死で後を追いかけていると、
 ヴァンはいきなりぴたっと止まって、岩の影に身を隠した。

 わたしもぐいっとひっぱられ、
 勢いあまってヴァンの胸の辺りに鼻をぶつける。



「いひゃいじゃん!」

「シッ!」



 口をふさがれ、言われた通りに黙る。

 すると、向こうから人がやってきた。
 
 あ、あれは、キヨコ!

 キヨコはうつむいて、男の後ろを歩いていた。

 となると、あの男がコズールか。

 黒いひげをたくわえた、荒々しい顔をした男だ。



「よし、おれがまず、説得してくる」



 え!?

 あの、肉体言語派。

 何様、おれ様のヴァンが!?

 わたしがショーゲキを受けてる間に、
 ヴァンは立ち上がって岩影から出ると、
 ふたりの前に立ちはだかった。