恋花ロマンチカ

告白もそうだけど、相手だってそうだ。


話に上がっているのは二年の片桐巧(かたぎりたくみ)先輩で、周りに無頓着なあたしでさえ知っている程の有名人。

入学して早々彼の話題で持ち切りだったから、名前は嫌でも覚えた。

去年のミスターコンテストの覇者で、女子生徒の憧れの的。この高校の、所謂〝王子さま〟

今は随分落ち着いたけれど、四月は特に凄かった。

彼が渡り廊下に居るとなれば女子達が窓辺に張り付いて、体育館に居るとなれば二階席もギャラリーで一杯になる。

彼が好きだと言う校内ベーカリーのパンはすぐに売り切れ。

告白待ちは長蛇の列で、誰もが彼の隣に鎮座するのを心待ちにしているだとか。

あたしは彼の情報よりも、入学間もないって言うのにそんな情報を仕入れているクラスメイトを尊敬した。


だけど、これがスクール格差ってやつなのだろうか。

共学だと、学業以外にも勉強しなきゃいけないことがあるんて、誰も教えてくれなかった。

今までの生活との違いに、打ちひしがれた瞬間だった。